コラム
【法人向け】オフサイトPPAの仕組みとは?メリットや注意点、導入事例を詳しく解説!
世界各国で温室効果ガス排出量削減に向けた取組が行われており、日本国内でも「脱炭素」に貢献したいと考えている企業が増えています。
太陽光発電の導入は環境負荷を軽減する取組の代表的なものですが、自社の限られた敷地だけではスペースが不十分なこともあり、「オフサイトPPA」への注目が高まっています。
そこで今回は、
- オフサイトPPAとは?
- オフサイトPPAと自己託送との違い
- オフサイトPPAとオンサイトPPAとの違い
- オフサイトPPAのメリット
- オフサイトPPAの注意点
- オフサイトPPAの導入事例や取組
などを解説します。
これから太陽光発電の導入を検討されている企業の参考になれば幸いです。
こちらの記事ではオフサイトPPAに特化した内容を解説しますので、PPAモデルの基本的な仕組みについて知りたい方は下記をご参照ください。
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オフサイトPPAとは?仕組みや自己託送との違い
オフサイトPPAの仕組みや定義、導入が拡大傾向にある背景など、基本知識について確認していきましょう。
また、オフサイトPPAは自己託送、オンサイトPPAと混同されがちであるため、違いについても解説します。
オフサイトPPAとは?仕組みや定義について解説
オフサイトPPAは、自家消費型太陽光発電の仕組みの一つです。
オフサイトPPAは「需要家」「発電事業者」「小売電気事業者」の三者間で行われる取引のため、まずはこの三者について解説します。
◯ 「需要家」」と「発電事業者」、「小売電気事業者」の各定義
【需要家】
発電した電気を使用する者のことを需要家と呼びます。
たとえば、太陽光発電で作った電気を使用する目的で情報収集している企業の方は、需要家にあたります。
【発電事業者】
太陽光発電システムの所有者であり、設置および管理する者のことです。
発電事業者は太陽光で発電した電気を需要家に売る代わりに、導入費用やメンテナンス費用を負担します。
【小売電気事業者】
オフサイトPPAで発電した電気は、送配電網を介して送られることから需要家と発電事業者の間で直接売買できないため、小売電気事業者を介して電気を売買します。
◯ オフサイトPPAの仕組みと定義
では次にオフサイトPPAの仕組みと定義を詳しく解説していきます。
オフサイトPPAの定義は以下の通りです。
再エネ電源の所有者である発電事業者 (ディベロッパー、投資家等含む) と電力の購入者(需要家等) が、事前に合意した価格及び期間における再エネ電力の売買契約を締結し、需要地ではないオフサイトに導入された再エネ電源で発電された再エネ電力を、一般の電力系統を介して当該電力の購入者へ供給する契約方式。 |
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引用:環境省・みずほリサーチ&テクノロジーズ「オフサイトコーポレートPPAについて」
つまり、自社の敷地外に設置された太陽光発電システムで発電した電力を、送配電して使用します。
システムや土地の所有者は発電事業者であり、発電した電気は小売電気事業者を介して売買するのが基本の仕組みです。
オフサイトPPAとオンサイトPPAの違い
「オンサイトPPA」と「オフサイトPPA」は、太陽光発電システムが需要地の敷地内にあるのか、敷地外にあるのかが最大の違いです。
需要地とは、需要家が電気を使う場所のことを指します。
需要地に太陽光発電システムを設置するPPAを、オンサイトPPAと呼びます。
電気を必要とする場所に太陽光発電システムが設置されているため、小売電気事業者を介して電気を売買する必要がありません。
ただ、太陽光発電設備の所有者は発電事業者なので、需要家は発電事業者から直接電気を購入します。
一方、需要地の敷地外に太陽光発電システムを設置するのがオフサイトPPAです。
土地および設備の所有者は発電事業者です。
一般の送配電網を使用して電気を送るので、電気を直接売買することはできません。
オフサイトPPAと自己託送との違い
「自己託送」と「オフサイトPPA」の最大の違いは、太陽光発電システムの所有者が需要家なのか、発電事業者なのかどうかであり、電気を必要とする場所から離れたところに設備を導入する点では同じです。
自己託送の場合、需要家が所有する需要地の敷地外に、需要家自身が太陽光発電システムを設置する仕組みです。
そのため、太陽光発電システムは需要家の所有物となります。
ただ、自己託送は需要家自身がシステムを導入するため、導入費用やメンテナンスコストなどを負担しなければなりません。
一方、オフサイトPPAは需要地の敷地外に設備を導入する点では共通していますが、需要家が所有している土地ではない点や、太陽光発電システムの所有者が発電事業者である点では相違しています。
オフサイトPPAが広がる背景
発電設備の規模を拡大し再エネ電力の導入量を増やしたいという企業が増えつつあり、再エネ電力の導入拡大のために有効な手段の一つとしてオフサイトPPAが注目されています。
さきほど解説した「オンサイトPPA」や「自己託送」は、自社で所有している敷地にしか設置できません。
とくにオンサイトPPAの場合、屋根の上や空いた敷地の一部などの限られたスペースにしか導入できないため、発電量を増やすことは簡単ではないでしょう。
オフサイトPPAなら、設備を設置するために必要なスペースに制限がないことに加え、初期費用やメンテナンスコストの負担もかかりません。
必要な電力を十分に確保でき、ネックになりがちな費用面の負担も軽いことで導入が拡大している背景があります。
オフサイトPPAのメリット4選
ここでは、オフサイトPPAのメリットを4つ解説します。
自社の敷地外で発電した電気を自家消費できる
オフサイトPPAは需要地の敷地外で発電した太陽光発電を利用できるのが特徴であり、メリットの一つです。
太陽光発電システムや敷地の所有者は発電事業者でありながら、需要家は太陽光で発電した電気を利用できます。
太陽光発電は需要地に設置するのが一般的でしたが、需要地から離れた遠方の敷地の電力を自家消費できるのは魅力といえるでしょう。
電力の供給量を増やせる
オフサイトPPAなら、需要地の敷地内に設置場所を確保しなければならないという制限がなくなるため、発電設備の規模を大きくして電力の供給量を増やせるのもメリットです。
電力の供給量を増やし、必要な電力を十分に確保したいと考えている企業にとっては、魅力的なシステムでしょう。
企業価値の向上に貢献する可能性がある
世界各国で脱炭素に向けた取組が行われており、このような社会の流れを無視して企業活動を継続することはむずかしい傾向にあります。
オフサイトPPAを含む太陽光発電システムなら電気を生み出すのにCO2を排出しないため、脱炭素経営を促進し、地球環境に配慮している企業としてアピールできます。
環境にやさしく、なおかつ企業価値の向上につながるのは大きなメリットだといえるでしょう。
電気代の削減が期待できる
昨今、電気料金の高騰が続いており、負担に悩んでいる企業も多いのではないでしょうか。
タイミングによりますが、オフサイトPPAの電気は電力会社から電気を購入するよりも電気単価が高いことがありました。
しかし、電気料金の高騰が続く現在では、電力会社から電力を購入するよりもオフサイトPPAの電気料金の方が安いケースが多くなっており、電気代の削減が期待できます。
また、一般的にオフサイトPPAは数年~20年など比較的長期の契約が多く、長期間に渡り電力調達コストを一定にできることがあり、電気料金の変動への対策となることがあります(一般の電気料金がオフサイトPPAの電力単価より安くなる可能性もあります)。
オフサイトPPAの注意点
メリットの多いオフサイトPPAですが、注意点もあります。
オンサイトPPAと比較すると費用がかかる可能性がある
オフサイトPPAは、オンサイトPPAをはじめとするほかの自家消費型太陽光発電モデルと比較すると、電気料金が割高になるのが注意点といえるでしょう。
自家消費型太陽光発電には、「自己所有」「自己託送」「オンサイトPPA」「オフサイトPPA」という代表的な4つのモデルがあります。
これらのモデルは同じ自家消費型太陽光発電ですが、かかるコストに違いがあります。
発電コスト | 託送料金 | バランシングコスト | 再エネ賦課金 | |
---|---|---|---|---|
自己所有※ | - | - | - | - |
自己託送※ | - | 〇 | 〇 | - |
オンサイトPPA | 〇 | - | - | - |
オフサイトPPA | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
※導入時の設備投資や運転開始後のメンテナンスコストあり。
このように、オフサイトPPAは発電コストと託送料金、バランシングコスト、再エネ賦課金という4つのコストがかかるため、電気料金としては割高になる傾向にあります。
ただ、導入コストやメンテナンスコストがかからないことに加え、発電コストは発電事業者と需要家が契約の上で決定するのが一般的です。
発生するコストは多いものの、長期的にかかるトータルの費用にも目を向けて総合的によいモデルを選択するようにしましょう。
一般の電気料金がオフサイトPPAの電気料金より安くなる可能性がある
オフサイトPPAの発電コストは発電事業者と需要家が長期で単価を固定して契約の上で決定するのが一般的です。
最近では一般の電気料金が高騰しているためオフサイトPPAの電気料金の方が安いケースがあります。
しかし、今後もし電気料金が大きく引き下げられるようなことがあった場合には、長期固定単価で契約したオフサイトPPAの電気料金よりも一般の電気料金の方が安くなる可能性があります。
非常用電源として活用できない可能性がある
BCPとは事業継続計画「Business Continuity Plan」を省略した言葉であり、万が一のトラブルや災害が発生したときに、被害を最小限に抑えて早急に事業活動を再開したり、復旧・継続したりするための計画のことです。
地震や台風などの災害がいつ発生するかわからないことに加え、電力逼迫、電気料金が高騰していることなどを背景に、各企業のBCP対策が求められています。
BCP対策をするうえで、電力確保は欠かせないポイントの一つであり、自社で電気を調達できる自家消費型太陽光発電は有効な手段の一つです。
ただ、オフサイトPPAの場合、非常用電源として活用できない可能性があるので注意しなければなりません。
たとえば、需要家と発電事業者間の送電設備が故障したり、切断されたりすると、電力供給がストップしてしまいます。
太陽光発電をBCP対策にもなる非常用電源として活用することを目的とする場合、リスクやメリットを自己所有型モデルなどとよく比較するようにしましょう。
太陽光発電だけでは消費を賄えない可能性が引き続き残る
オフサイトPPAは需要地の敷地外に設備を設けられるので、発電できる規模を拡大しやすいのが特徴です。
しかし、夜間は発電ができなくなるため、電力消費のすべてをオフサイトPPAでまかなうことはむずかしいでしょう。
さらに、雨や雪などで発電量が減って電力が不足した際も、電力会社から電気を購入しなければなりません。
つまり、オフサイトPPAは発電規模を拡大しやすい反面、すべての消費電力をまかなうのはむずかしいため、不足する電力量と電気料金をシミュレーションしておく必要があるでしょう。
また、再エネ電力100%を目指す場合には、環境証書付き電力の購入なども検討する必要があります。
オフサイトPPAの導入事例や取組
ここでは、オフサイトPPAの導入事例について解説します。
大和電機グループが鹿児島県初のオフサイトPPAを導入
2021年8月、大和電機グループの新たな発電所である発電量49.5kWの「やまとソーラープラント細田口」の稼働が開始されました。
やまとソーラープラント細田口で作られた電気は、電力会社に売って売電収入にするのではなく、オフサイトPPAとして活用されているのが特徴です。
そのため、発電された電気は直線距離約6km離れた場所にある「かごしま環境未来館」に送電され、施設の電気として使われています。
丸紅グループでのオフサイトPPAに関する取組
丸紅グループである丸紅新電力では初期投資と発電用の土地がなくても実質的に再生可能エネルギーを利用できる「オフサイトCPPAサービス」を提案しています。
電力を売りたい、あるいは脱炭素経営をしたいと考えている企業の中には、何から始めたらよいのかわからない、ノウハウがなくて困っていることもあるでしょう。
そこで丸紅では、「オフサイトCPPAサービス」を通じて、発電事業者にあたる電力を売りたい企業と、脱炭素経営を目指す企業(需要家)をつなぐことで、企業同士にとってメリットのある関係構築をサポートしています。
丸紅は電力関係の事業を開始して20年以上の実績があり、ノウハウや経験を通じて最適なサポートが可能です。
まとめ
自家消費型太陽光発電のモデルの一つであるオフサイトPPAは、規模の大きな発電システムを導入できたり、企業価値の向上が期待できたりとさまざまな魅力があります。
しかし、検討から導入に至るまで、システムの基本的な仕組みやメリット、注意点などを理解したうえで導入する必要があり、何から検討すべきかわからない企業もあるでしょう。
そこで丸紅では太陽光発電システムの導入を検討している企業に対し、導入をサポートしています。
自社保有型やオフサイトPPAという選択肢から、企業ごとの電力使用状況や設置場所に合わせて最適なプランを提案可能です。
オフサイトPPAの場合、発電する土地の取得や施設の管理は全て丸紅新電力と発電事業者で調整するので、ノウハウや初期投資は必要ありません。
太陽光発電システムの導入の際はぜひ丸紅までご相談ください。